15年前に患者さんに書いていただいた症例が過去のデータを読み返していたら出てきました。
この頃から私の鍼灸のスタイルは完成していたと思います。
東洋医学では四診法(望診・聞診・問診・切診)という4つの診察法があるとされています。
望診は神技ともいい視覚を通して病態を診察する方法であり恩師から最も重要だと教わりました。
次に聞診。聴覚、嗅覚を通して病態を診察する方法で聖技といいます。
問診は問いかけと応答により病態を診察する方法で工技と言われます。
最後は切診。指頭指腹および手のひらの触覚を通じて病態を診察する方法で巧技といいます。
私は患者の目や手の動く癖、そして顔色や髪の色艶を同時にカルテに書かれた書体を診ます。
声や呼吸からは音の抜け方に注目をして、体臭からは内臓の状態を確認します。
また手相や人相といった相と主訴との関係、手掌診をおこなうのも特徴です。
触れることからは、経穴の皮膚の緊張や寒熱、腹診により腹壁の緊張と弛緩、脉診により生命力を診ます。
これらを統合して1つの情報にまとめるのですが、その時の訴え(病気)が「疾患」なのか「病」なのかを見極めます。
これまで細かくどのように診ているのかを説明しましたが、あくまでも目の前の人を細分化しただけであり、それを再合成したからといって一人の人間を理解することはできません。
なぜなら人の病気は身体が心に影響を与えるもの、心が身体に影響を与えるものがあるからです。
ですから、これらの情報を得たからといって表面的なもので理解するのではなく、裏付けとしての裏面を同時に理解する必要があります。
私は「垂直的思考」(機械的情報処理)と「水平的思考」(生物学的情報処理)により、多角的に診ることを大切にしているのですが、その理由は人には様々な物語があるからです。
みなさんは、NHKのファミリーヒストリーを観たことがありますか?
例えば、あなたが存在するには多くの人の命がかかわっています。
そして、その人々が生まれ育った環境、風土があって、人との関わりの中で価値観を養うわけです。
捻挫をしたとしても骨格的に起こりやすいものなのか、筋力的に起こりやすいものなのか、偶然に起きたとこなのかを考えますし、回復する過程もこれらに関係するのです。
「この病気は治りますか?」という問いに対して、治ると断言できない理由はこのような部分にあります。
そしてこれらの情報を完璧に集めたからといっても情報に過ぎません。
一番重要なものは治療技術です。
というのは間違いであり、一番重要なものは生命力です。
Aさんはすぐに治った。
Bさんはなかなか治らない。
その差は何か。
それは遺伝的な要因もあります。
そして後天的な生き方も大きく影響します。
自然に生きてきた人と不自然に生きてきた人では回復速度や変化量には差が生じるものです。
私は沢山の知識、技術を身につけており、多くの方を診てきました。
他の鍼灸師や整体師よりも専門性が高いことが特徴です。
しかし、病気が治るには「生き方」「あり方」が大きく影響します。
全人的な理解をして鍼灸治療をおこないますが、東洋医学を受ける場合にはどのように受けるかが重要です。
突き放すことも依存させることもしません。
私は治せません。
治せるのは自身の治癒力です。
私はその治癒力を発揮させるために存在します。
治療したい、休みたい、リラックスしたい。
どのような状態にたいしても応える経験値がありますから、来院する際には目的を定めてみてください。
その答えに対して必ず応えます。